ヤクシマザル調査マニュアル参考資料

天気図の書き方

1999.6.22. 臼井拓

気象通報の放送時刻と内容
 気象通報はNHK第2放送で1日3回、9時10分、16時、22時から20分間放送される。放送内容はそれぞれ当日の6時、12時、18時の気象である。放送内容は次のもので構成される。 各地の天気―日本付近の54ヶ所の風向、風力、天気、気圧、気温が放送される。富士山ではほかに風速(m/s)が加わり、気圧や天気は報ぜられないこともある。気圧の値が4桁の場合は普通下2桁だけが読み上げられる。(例:大阪では東南東の風、風力3、くもり、17hPa、23℃) 放送される順番は決まっており、石垣島から日本列島を南から北へ、ロシア、韓国、台湾、中国、フィリピン、父島、富士山の順である。 
海洋気象ブイおよび船舶の報告―海上の資料で、位置は北緯・東経であらわす。ブイは日本海、東シナ海などの一定地点にあって、風向、風力、気圧を報じている。
漁業気象―漁業のための気象という意味ではなく、天気図解析の結果である。すなわち、高気圧、低気圧、前線、台風などの位置、中心気圧、進行方向と速度、最大風速、霧の区域、特定気圧の等圧線の位置など。

気象要素の記入
 放送は一回だけであるから、前もって天気図用紙を準備しておき速記する。練習の際にはカセットテープに録音しておくのもよい。天気図を迅速に作成するためには、放送を聞きながら天気図に直接記入することが望ましい。天気図用紙は書店や気象協会で販売している。初心者には記入欄のついた1号用紙が便利である。2号用紙は地図の範囲は広いが、太平洋が広くなるだけなので山の場合はあまり必要ではない。
 天気図用紙の各地点の○(マル)に記入モデルにしたがって、インクかボールペンで書く。該当地点にマルがない場合は自分でマルを書いて記入する。風向は16方位を用い、風の吹いてくる方向から地点のマルに向かって棒を一本引いて表す。風力はこの棒に風力の数と同じ数の横棒をつける。横棒はマルから見て風向きの右側につけて、一番外側の棒を少し長めにし、風力7以上のときは反対側にもつける。隣の地点と重なって書けないときは、マルから少しずらして書く。「風弱く」のときは、マルのまわりを円で囲む。天気はラジオ気象通報ようの天気記号(日本式)を用いて書く。気圧はマルの右側に、気温はマルの左側に記入する。少々データが少なくても何とかなるので、聞き逃した場合はあまり気にせず次の地点の天気を記入する。
 地図上の地名と、放送される地名が異なることがあるので注意すること。近年では、広島、石巻のかわりにそれぞれ松山、仙台の天気が読み上げられる。また、シスカ、ウツリョウ島は放送ではそれぞれポロナイスク、ウルルン島と読み上げられる(場所は同一)。

漁業気象の記入
 天気図解析記号を用いて書く。高気圧、低気圧、台風などの中心の位置に×印をつけ、ばつしるしのちかくにHLT、またはなどと書く。中心気圧は×印の近くに、進行方向は中心から矢印を出し、速度は矢印の頭に書く。台風や発達した低気圧の暴風域(おおむね25m/s以上の区域)、予想位置を示す予報円なども書いておく。予報円を書くときは、緯度1度が約110kmに相当することを参考にするとよい。慣れないうちは例えば「北緯40度東経144度には1014hPaの低気圧があって 東北東に30キロで進んでいます」というときは「40 144 14hPa L ENE →」というように簡潔にメモするとよい。前線の通る位置は×印を小さくつけ、あとから線で結び、色や前線の記号をつける。山の場合は、強い風の海域、濃い霧の海域などは記入しなくてもよい。

等圧線の描き方
 等圧線の描写には消すのに楽なHBかB程度の鉛筆を使うとよい。等圧線は、気圧の等しい線であるからデータの多いところでは楽にかけるが、海上などデータの少ないところでは、気象学の理論にしたがって書くことが大切である。

a) 高気圧、低気圧、気圧の谷、高圧部、低圧部の意味をしっかりと理解しておく。等圧線を、地図の等高線のようにイメージすると理解しやすい。高気圧とは、等高線の山頂に対応すものであり、周辺より気圧が高くなっているところをいう。同様に低気圧とは、周辺より気圧が低くなっているところをいう。また、台風は気圧が著しく低い低気圧と考えることができる。気圧の谷とは、地図にある谷間のように細長く延びている気圧の低いところで、その両側に山に相当する高気圧がある。また、2つ以上の低気圧があるとき、これらを結ぶ気圧の低いところも気圧の谷である。気圧が広範囲にわたって低く、中心がはっきりしない部分を低圧部、気圧の高い区域であれば高圧部という。2つ以上の高気圧が帯のようにつながれば、帯状高気圧である。

b) 等圧線は2hPaまたは4hPaごとに描く。新聞やテレビの天気図は4hPaが多いが、初心者や局地の天気を細かく見るのには2hPaごとに描くとよい。等圧線は偶数の気圧の値ごと、または4の倍数ごとに書くが、各地の気圧は必ずしもこのような値にはならないので比例配分して描く。等圧線は陸地では地形の影響もあって多少はくねくねすることはあるが、一般には滑らかに描く。気圧は少数第1位を四捨五入した値なので、細かい点にはあまりこだわらない。

c) 等圧線を書く前に、高気圧、低気圧がどこにあって、どのように風が吹いているのか全体を眺め、頭の中で一応の等圧線の形を思い浮かべる。高気圧からは風が時計回りに吹きだし、低気圧には風が半時計回りに吹きこむことが基本である。

d) データの多いところから描きはじめ、データのないところは後回しにする。

e) 低気圧や台風は外側の等圧線から描き始め、内側の中心付近の等圧線へと攻めていく。高気圧も同じで、一般に中心付近は後回しにする。

f) 地上風と等圧線のなす角は、一般に25〜35度で、陸上で大きく海上で小さく、低緯度で大きく高緯度で小さい。

g) 等圧線が混むほど風が強い。

h) 前線のところでは等圧線は、低気圧性の曲率でとんがって折れ曲がる。

i) 閉塞前線の描き方を理解する。閉塞前線は、寒冷前線が温暖前線に追いついてできる前線であり、寒冷前線の後面の寒気と温暖前線の前面の寒気とがどちらが冷たいかによって、寒冷前線型閉塞前線と温暖前線型閉塞前線に分類される。寒冷型、温暖型閉塞前線と閉塞店から出る寒冷前線、温暖前線の関係は、“”か“”の型になる。

j) 間違えやすい等圧線の例
(ア) 前線付近の折れ曲がり方が悪い。
(イ) 1010 hPaの等圧線が平行である点が悪い。
(ウ) 同じ等圧線(1014hPa)の間に孤立した1本の等圧線(1012hPa)が入ることはない。
(エ) 等圧線はループを描いたり、枝分かれしたりすることはない。
(オ) 等圧線を極端にデコボコさせない。

等圧線が描けたら仕上げに、1000hPaを基準として20hPaごとの等圧線を太めに書いておく。4hPaごとに等圧線を引いた場合に2hPaの等圧線を補うときは破線で書く。これで天気図は完成である。

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