早石周平(鎌倉女子大学、1999‐2008年参加)
冒頭挨拶
私が本日司会予定の大阪大学の大谷さんではなく、ごめんなさい。大阪大学の大谷さんとチラシに出ていたと思いますが、鎌倉女子大学の早石が代打で出てきました。講演に入る前にヤクザル調査隊について私の方からお話しさせていただきます。早速で申し訳ないのですが、調査隊に参加した延べ人数は1368人ではなく1501人でした。1501人中の一人が私でございます。よろしくお願いいたします。さて、30周年記念シンポジウム「1501人で解き明かした屋久島のニホンザルの暮らし」を始めていきたいと思います。
本日のスケジュールはこのようになっております。こちらに大谷さんの名前が書いてありますが私に替わっています。ヤクザル調査隊では予定になかった台風が急に現れて、かなり悲惨な目に遭うっていうことがあるのですが、今日の私もそんな風にここに出されたのかなって思います。予定通りに進めていきたいところだったんですが、事前にお知らせしました通り、本日山極さんの登壇叶わなくなりました。ビデオでの講演となります。本日山極さんとお会いできると楽しみにしていらっしゃった方も多くいらっしゃると思いますが、この後ビデオを見ていただいて、山極さんが屋久島のサルにどのような思いで取り組んでこられたか感じ取っていただければと思います。なにとぞご容赦ください。そしてまたパネルディスカッションには、山極さんに代わり、武蔵大学人文学部教授の丸橋珠樹さんにご登壇いただけることになっております。お楽しみにお待ちください。
それでは各登壇者発表の前に、私の方からヤクザル調査隊とはいったい何なのかということを簡単にご説明したいと思います。ヤクザル調査隊が主に調べているのは、ヤクザルです。ヤクザルの標準和名はヤクシマザルといいます。その名の通り屋久島に住むニホンザルの固有亜種で、屋久島にしかいないニホンザルの仲間ということです。形態、つまり体のつくりや社会性に私たちがこの辺に見かけるニホンザルとは多少の差がありますが、基本的には本州にいるニホンザルとの違いはありません。ではなぜわざわざ屋久島のサルを研究するのか、それは屋久島の環境が特殊な多様性を持っているからということになります。順を追って説明していきましょう。
屋久島は九州本土の最南端佐多岬から60kmの海上に位置し、周囲長が約130km、人口は約13,000人の島です。最大の特徴は高さです。その隣にある種子島の断面図ですが見ていただくとわかるように、屋久島は比較的暖かいところにある島ですが、標高が高くなると寒くなるわけで、そのため九州南部から青森くらいまでの気候が直線距離で、十数キロの間に凝縮されています。これを垂直分布といいます。人々が比較的入っていない状態でこの垂直分布が連続的に残されているというのは世界的に見てもかなり珍しいことです。皆さんご存じのように、これが世界遺産に登録された理由の一つになっております。サルはこの赤いところから、紫のところまで生息しております。この多様な環境の中で、サルたちがどこにどのくらいいるのか、何を食べているのか、長期的に分布などがどう変化しているのか、こうしたことを知るためには、それはそれはとても大変な調査が必要になります。
しかし、それをマンパワーで解決しようというのが、やはり今日もマンパワーでやらされていますが、ヤクザル調査隊です。1989年に結成されたこの隊はプロの研究者プラス学生中心のボランティア要参加費で、もう一回言います「要参加費」で構成され、これまでのべ1501人、1501人、1501人が参加してきました。こんな感じで、サルの調査をみんなでやるということなんですが、本日のシンポジウムではどんな経緯で調査が始まったの?なにがわかったの?ボランティアでそんな集まるって物好きが多いんですね、はいそうです。電気もガスも水道もない場所での調査ってどんな感じ?といったことをお話ししていきます。